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Diary/2003-12-25

海峡の光

辻仁成さんの小説です。
少し前に読んだ、ピアニシモに続いてこの人の小説を読むのは二作目。
あ、冷静と情熱のあいだの青いほうも読んだから三作目か。
ピアニシモは、光と影、ものの二面性なんかを考えさせられた小説だった。
主人公の中にいるもう一人の人格。
表にいる自分が影で、中にいる自分がつねに輝いている光(名前もヒカルだし)。
でも、その光は本当の自分をかげたらしめつづける存在、成長できない自分...

海峡の光は、
優等生であり立ち振る舞いが上手でいじめっ子だった「花井」と
そのいじめられっ子だった「斎藤」の二人が
刑務所で再会するところから話がはじまる。
花井が傷害の罪を犯した犯罪者として、斎藤が看守として。
斎藤は看守としての威厳をみせつけていながらも、
花井の行動から目が離せないまま、日々は過ぎていく...
と一本の簡単な話ではなく、
斎藤が昔乗っていた客船の船乗りとのやりとり、
高校のとき、ぞんざいに扱った女の子との再会とその子の身投げ、
バーで知り合った傷のある女性との不倫、といくつかの話が、からまる。
メインの(?)筋では、花井がその優等生っぷりを発揮し、
何度も釈放されうる機会を得るのだが、わざととも思える立ち居振舞いで
それをぶち壊す。簡単な試験に落第したり、暴れたり。
そして、いつ、その恐ろしい「いじめ」の才能が爆発するのかを怖れつづける斎藤...
花井は何を求めていたのか、それとも何も求めることができなかったのだろうか。
傷つくものを見て喜び、かっこいい自分を知らずに演じてしまう人間のよう。
そしていつまでも切れない二人の縁。
いったい、辻仁成さんは何が書きたかったのだろう...?
しかし、この人、言葉の使い方さすがにうまいですね〜
...「やっと会えたね」なんて、なんで言ったんだろ