!海峡の光 辻仁成さんの小説です。 少し前に読んだ、ピアニシモに続いてこの人の小説を読むのは二作目。 あ、冷静と情熱のあいだの青いほうも読んだから三作目か。 ピアニシモは、光と影、ものの二面性なんかを考えさせられた小説だった。 主人公の中にいるもう一人の人格。 表にいる自分が影で、中にいる自分がつねに輝いている光(名前もヒカルだし)。 でも、その光は本当の自分をかげたらしめつづける存在、成長できない自分... 海峡の光は、 優等生であり立ち振る舞いが上手でいじめっ子だった「花井」と そのいじめられっ子だった「斎藤」の二人が 刑務所で再会するところから話がはじまる。 花井が傷害の罪を犯した犯罪者として、斎藤が看守として。 斎藤は看守としての威厳をみせつけていながらも、 花井の行動から目が離せないまま、日々は過ぎていく... と一本の簡単な話ではなく、 斎藤が昔乗っていた客船の船乗りとのやりとり、 高校のとき、ぞんざいに扱った女の子との再会とその子の身投げ、 バーで知り合った傷のある女性との不倫、といくつかの話が、からまる。 メインの(?)筋では、花井がその優等生っぷりを発揮し、 何度も釈放されうる機会を得るのだが、わざととも思える立ち居振舞いで それをぶち壊す。簡単な試験に落第したり、暴れたり。 そして、いつ、その恐ろしい「いじめ」の才能が爆発するのかを怖れつづける斎藤... 花井は何を求めていたのか、それとも何も求めることができなかったのだろうか。 傷つくものを見て喜び、かっこいい自分を知らずに演じてしまう人間のよう。 そしていつまでも切れない二人の縁。 いったい、辻仁成さんは何が書きたかったのだろう...? しかし、この人、言葉の使い方さすがにうまいですね〜 ...「やっと会えたね」なんて、なんで言ったんだろ